「どこの歯なのか分からないけど不規則に痛い。」
「食べ物を噛むと痛い。」
「歯ブラシが当たるだけで痛い。」
「奥歯全体がしみる。」
と言って診査してみると虫歯や歯周病の疑いはない。
そういう時は、欠けている歯はあるか、舌や頬の内側にデコボコの跡がついてないか、歯ぐきや上アゴがボコボコ膨らんでないか、エラが発達しているか等を診ます。
それらが認められる方は日常的に食いしばりや歯ぎしりをしていることが疑われます。自分ではしていないと思っていても私たちが口の中を見ればその形跡は分かります。
「食いしばり」と言ってもスポーツの時のように激しく食いしばることではなく、上下の歯が当たっているだけでも「食いしばり」と言います。通常、噛むための筋肉がリラックスしている時は上下の歯は2〜3㎜程離れているのですが、上下の歯が常に接触している癖がついてしまっている人が意外と多くいます。この癖のことを専門用語でTCH(Tooth Contacting Habit)と言います。
下の顎は左右の関節を支点にぶら下がっており顔を下に向けると顎は閉じます。PCやスマホを長時間見たり、下を向いて集中する時間が長いと顎が閉じて歯が接触しやすくなります。顔を正面に向けても歯が接触した状態のまま過ごしてしまうとそれがTCHの状態です。
歯と骨の間には歯根膜というクッションの役目をする膜があります。TCHによって常に上下の歯が当たっていると歯根膜が常に押されている状態になり歯根膜が炎症を起こし、「噛むと痛い」という症状に繋がります。と言っても炎症の程度は弱いことが多いのではっきりとした痛みというより違和感程度に感じるため、「どこの歯が痛いのか分からない」や「全体が痛い」という言い方になります。
また、普段TCHの状態が長く続くとその分食いしばりや歯ぎしりもしやすくなります。夜眠っている時の歯ぎしりは起きている時には考えられない位の力がかかります。起きている時に意識的に歯ぎしりをしてみてもあんなに大きなギリギリ音は出ません。強い歯ぎしりは歯が欠けたり、歯ぐきの中の骨が異常に発達したり、首や頭の痛みを招いたり、ひどいと目眩や耳鳴りにも関与します。歯ぎしりによる悪影響を避けるためにも普段からTCHを意識してなるべく上下の歯が離れているようにすることが大切です。
しかし一度意識しても、人はすぐに忘れてしまいます。
癖を治すことは簡単ではありません。
対策として、普段よく目にする場所(パソコンやテレビ、本棚など)に目印をつけたり付箋を貼ったりして思い出すための工夫をしましょう。スマホのリマインダー機能を使って1日に何回か「上下の歯を離す!」と出てくるようにすることも効果的です。凝り固まった筋肉をマッサージしたり伸ばす(大きく口を開けることでストレッチになります)ことも重要です。
この「NO TCH」ステッカーは当院オリジナルで作成しました。当院にいらしてTCHの疑いのある方に無料でお配りしています。
意識し続けないと習慣や癖を変えることは容易ではありませんが、身体に悪影響を及ぼすことはできる限り避けた方が良いでしょう!